いわき総合高校演劇部『あひる月13』

いわき総合高校演劇部『あひる月13』を見た。毎年、楽しみにしている彼らの東京公演。いま、いわきに住んでいる高校生だからこその、リアリティ。とても胸に迫ってくるものがありました。そして、同時に高校生ゆえのキラキラ感が同居していて。せつないんだけど、まぶしくて、きゅーんとなりました。

最初はどこにでもあるような、きゃぴきゃぴした高校3年生の教室に見えた。ヒエラルキーがあって、仲良しグループがあって。それが生徒たちが順ぐりに震災後に抱えてるもやもやを吐露していくと、何度もループする教室の景色がどんどん違う意味を持っていった。

いちばん胸が詰まったのは、クラスでいじられ役になってるかっちゃんと、学校サボりがちでクラスからちょっと浮いてるナツミのパートだ。避難区域の富岡町出身で複雑な思いを抱えてるナツミ。そのナツミの思いを知り、へらへら笑うことしかできないかっちゃん。

15歳まで住んでた富岡町のことを、少しずつ忘れてしまうナツミ。すごく大切な場所だったのに、記憶が薄れていくという怖さ。でもそれはナツミに限らなくて、みんな震災前のことを少しずつ忘れていってる。ただそれをどう受け止めるかは、それぞれ次第なんだな。

震災で住んでたアパートが水につかってからプールに入れなくなった子と友だちのエピも印象的でした。同じ中学で双子みたいに仲良しだったのに、震災後ズレが生まれてく。教室のシーンのなんでもないようなプールに関する会話が、あんな気持ちを秘めてたとは。

いつも写真ばっか撮ってて、ちょっとおどけたような男の子が、あんな思いを抱えて写真を撮ってたっていうのも印象的でした。写真と記憶って、すごく密接なものだから、余計に。彼のファインダー越しの教室は記録されるけど、記憶は薄れてくんだろうな、やっぱり。

震災の影響で仮校舎で日常を送ってる生徒たち。日常なのに、非日常なんだなあと思った。そんな中から生まれた作品は、伝えようとする力が強いものでした。今回のテーマは「覚えていたいのに忘れていくこと」。伝わってきたよ。また彼らが作る作品を見たいと思う。

終演後、部員のみなさんが出口のところに並んで、「ありがとうございました」と見送ってくれた。こそばゆいけど、うれしかった。高校生らしい、すがすがしさ。ほんとはひとりひとりの目を見て、ちゃんとお礼言いたい位だったんだけど、できない大人でごめん。

毎年、見る度に思うんだけど、出てる子たちがみんな、いとおしくなるね。もちろん、モブや背景をやってる子も。そして、若くして、あんな風に一生懸命、演劇って表現に向かえて、ちょっとうらやしくもあるなあ。ボンクラ高校生だった私には、まぶしい子たちだ。

いわき総合高校演劇部『あひる月13』、駒場高校演劇部『さようなら、解散。』、青森中央高校演劇部 『もしイタ〜もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』なんかを見たけど、いまの高校演劇って、ほんとおもしろいことになってんなあと思う。