さいたまネクスト・シアター『蒼白の少年少女たちによるカリギュラ』

すばらしかった。若い俳優さんの力を、演出の蜷川幸雄さんが存分に引き出していて、見応えありました。メインの人はもちろん、モブの人までしっかりした演技。ネクスト・シアター結成時から比べると、ものすごい成長っぷり。

アルベール・カミュ脚本の『カリギュラ』は、2007年に蜷川さんは小栗旬さん主演で演出してて(いちばん小栗さんにはまってた時期で4回位見た・笑)。その小栗版『カリギュラ』と比べて、ネクスト・シアターの『カリギュラ』は別な魅力がありました。蜷川さんの演出は、以前より研ぎすまされてた。

蜷川さんの演出がソリッドだから、それぞれの俳優さん、役の魅力が際立ってた。内田健司さんのカリギュラは、権力があって暴君なんだけど、実は人一倍繊細で傷つきやすいって面が見え隠れして、よかった。シピオンの砂原健祐さんの無垢さも忘れがたい。ふたりが語り合うシーンは白眉。

小栗版では長谷川博己さんが演じてたケレアって役が好きなんですけど。ネクスト・シアター版では、川口覚さんがケレアに。川口さんのケレアのクールで理知的な感じ、ステキだった。そしてカリギュラとケレアがふたりで腹を割って話そうとするけど、結局はわかり合えないシーンよかった。

セゾニアの周本絵梨香さん、エリコンの小久保寿人さん、しっかりした演じ様。このふたりがカリギュラのそばにいてくれるってことは、滅びへ向かうお話の中、救いでした。そして貴族などモブを演じてる俳優さんたちも、老け役に挑戦したり、それぞれに個性を発揮していて楽しかった。

さい芸のステージの上に、暗幕を張り巡らし、ふだんとは違う小さな劇場=インサイド・シアターを作り出していて。その限られた空間で、濃密なお芝居を観るという特別感、たまらない。椅子やテーブルの使い方も印象的だった。あと蜷川さんの鏡使いは、やっぱり、さすがの域ですね。

楽日ということで、カーテンコールには蜷川さんも登場。とても楽しそうにしてらした。

あ、とても立派な当日パンフ、蜷川さんの『カリギュラ』への思いを綴った言葉のレジメ、配役表をいただけたのもうれしかったな。