舞台『非常の人 何ぞ非常に〜奇譚 平賀源内と杉田玄白〜』

物語の縦糸は、『解体新書』が出来上がるまでの平賀源内と杉田玄白の深く、そして因縁めいた交流。

蔵之介さん演じる源内の、才人ゆえの孤独を抱えてる感じがすごくよかった。満足。岡本健一さんの玄白は誠実さがにじむ。小柳友君は陰間(男娼)という難しい役どころに挑んでた。奥田達士さん、篠井英介さんが何役も演じてて、その達者さにうなる。篠井さんの女形は、見るとなんか得した気がするね。

作・演出は、マキノノゾミさん。うまくまとめられてらしたけど、正直、食い足りない部分もあった。それがどこかってのは、うまく説明できないんだけど。

んで、この舞台を見たら源内のことが知りたくなってネットで生涯を調べたら、史実がうまく劇中に盛り込んであったんだなあと知る。あと蔵之介さんの髷が細めで変わってるなあと思ってたら、『平賀鳩渓肖像』って絵を参照にした髷なのか。おもろ。

蔵之介さんの髷が細めで変わってるなあと思ってたら、『平賀鳩渓肖像』って絵を参照にした髷だったんだなあと、観劇後、源内のこと調べて知る。

2幕目の源内の家のセットがとても好みでした。本草学者、地質学者、蘭学者、医者、殖産事業家、戯作者、浄瑠璃作者、俳人、蘭画家、発明家…といろんな顔を持つ源内だからこその、雑然さと整理された部分の混在。ああいう家に私も住んでみたい。

タイトルの“非常の人”は、玄白が記した源内の墓碑より。「嗟非常人、好非常事、行是非常、何死非常」(ああ非常の人、非常のことを好み、行いこれ非常、何ぞ非常に死するや)。「あなたは常識とは違う人で、常識とは違うものを好み、常識とは違うことをする、しかし、死ぬときぐらいは畳の上で普通に死んで欲しかった」って意味らしい。玄白、源内の死を深く惜しんだんだなあ。

最後にミーハー感想。ひさびさに舞台の蔵之介さんを見られて、満足。時代劇なので、すっとした着物姿がたっぷり見られて、さらに満足。とくに着流し、たまらん。ドラマ(救命病棟)の撮影と並行してるのかな。すごく大変だろうけど、無事に千秋楽を迎えられるよう、こっそりお祈りします。