『鉈切り丸』

『鉈切り丸』(脚本:青木豪さん/演出:いのうえひでのりさん)を見た。

シェイクスピアの『リチャード三世』を、鎌倉幕府の初期に重ねて、描き出してた。いやあ、圧巻でした。笑いもありつつ、基本はダークネスなのが好み。そしてシェイクスピアの時代劇への翻案って、やっぱりはまるなあと。

特にタイトルロールの鉈切り丸=源範頼を演じる森田剛君がすごくて。悪事の限りを尽くす人物だけど、ひきこまれた。最後はもう範頼びいきになってたので辛かった。そして身体的ハンデをいくつも抱えた役なのに、森田君の殺陣や見得のすばらしいこと。元々好きな役者さんだけど、見惚れた。

ラストシーンのカタルシスたるや。そして、あの迫力。お芝居が終わっても、しばらく夢から醒めないような感覚を味わった。そして、このシーンのセットのすばらしさよ。あと範頼はああいう最後を迎えるけど、あれって、自らの業からやっと解放されるってことでもあったのかなあと思ったり。なんか半泣きになった。

役者陣のぶ厚いことったら。好きだったのは、若村麻由美姐さんの北条政子麻実れいさんの建礼門院秋山菜津子姐さんのイト、渡辺いっけいさんの梶原景時かな。生瀬勝久さんの源頼朝山内圭哉さんの大江広元はズルい(笑)。若手の成海璃子ちゃん、木村了君、須賀健太君も健闘してた。

若村さん政子で生瀬さん頼朝って組合せ、思いついた人、えらいよね。そした麻実さんの生き霊は、物語の要でした。麻実さんいなかったら、みんな道違ったんだろうな。ふたりともすばらしかった。若村さんと麻実さんが登場すると圧が強くて。資質として近いものを感じました。ふたりの出自は全然、違うんだけど。

『鉈切り丸』見てたら、ストレートなシェイクスピア劇での森田剛君も無性に見たくなった。もちろん悲劇で。誰か、企画してくれまいか。

追伸
せりふに何度か後白河法王の名が出てくるんだけど、だったらゴッシーも登場させてよ!と、ついつい思ってしまう『平清盛』脳な私。